2006年08月15日

さよなら、消費社会 カルチャー・ジャマーの挑戦

4272330462さよなら、消費社会―カルチャー・ジャマーの挑戦
Kalle Lasn 加藤 あきら
大月書店 2006-06

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社会的な問題をとりあげた本は読後欝な気持ちになるものが大半だが、この本はそうではない。むしろ勇気がわいてくる。受け身な生き方を捨てて、行動しようという気分になる。人生は何を信頼するかで大きく変化し、間違ったものを信じるとひどい目に遭うが、最後は己の直感に賭けるしかない。僕の直感はこの本は信じられると告げている。筆者の主張すべてを受けいれられるわけではないが、核の部分では確かにその通りだよなあという思いを抱く。

本書で「カルチャー・ジャミング」は「消費主義文化の創造的破壊」と訳される。地球環境を短期間のうちに食い尽くす歯止めのない経済、広告に支配されて本来の役割を果たさないメディア、メディア漬けの生活で失われる人間らしい生き方。これらの問題に疑問を抱き、おかしいと思うことには戦略的に立ち向かおうというのが「カルチャー・ジャマー」という名の活動家である。戦略的に、というのは旧時代の反対することのみに意義を見出すのではなく、理にかなった、人情としても受けいれられるような方法を選ぶということだ。僕がカルチャー・ジャマーの活動に好感がもてるのは、他の運動では見逃されがちな、ユーモアという要素があるからだ。

さらにこの本の著者カレ・ラースンが重視しているのは、攻撃する相手のクールというイメージを転換させることだ。例に挙げられているのは、かつてはかっこいいイメージとともにあったタバコが、多くの人の努力により、今ではださいものに変わってしまったことだ。このような経験則を生かせば、ブランドの商品を身につけるという行為も全然クールじゃないという世界に変えることは可能だとカレは言う。

日本の事情でいえば、最近の10年を超える不況もあって、企業を守ることだけが重視され、その結果として企業の論理が最優先という社会ができあがった。それに異議を唱えようとすれば、日本が貧乏になっていいのか、と言い返され、経済成長のためだ少しぐらい我慢せんか、という風潮になっている。少しぐらい、ではないんだけど。

重要なのは今みたいなやり方を続けていて、本当に日本人が幸せになるのかということだ。そのことに違和感を覚えている人なら、結構面白さを感じてもらえると思う。くりかえすが勇気が出る本だ。

Culture Jammers jp…アドバスターズの日本サイト
Adbusters Culturejammer Headquaters…アドバスターズ本部

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2006年05月17日

技術空洞

4334933793技術空洞 Lost Technical Capabilities (光文社ペーパーバックス)
宮崎 琢磨
光文社 2006-04-21

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SPAさんのソニ☆モバで紹介されていた本。僕はかつて一時期ソニーファンでしたが、今はソニーの新製品にもふ~んって感じです。そんな僕がこの本を手に取ったのは、VAIOについての記述が読みたかったから。

このブログに何度か書いてますが、僕はVAIO R73Kというパソコンを持っています。2000年に購入した、今は昔の機種ですが、今でも現役です。ほとんど、TV録画機と化してますが。

購入当時は30万円以上しました。今から考えると、よくパソコンにそれだけつぎこんだなという思いがします。今では、次のパソコンは6万円程度で自作しようかなという感覚なので隔世の感があります。VAIO type Uも魅力的な機種だとは思うけど、今さらパソコンに10万円以上出す気にはなれないです。ソニーがターゲットにする、高付加価値商品の購入層からは完全に脱落しました。

だけど、VAIO Rシリーズを買ったことには後悔はないんですよね。買った直後は不具合も多く、後から多くのパッチプログラムを適用するはめにもなりました。しかし、今のHDDレコーダーの先駆け的な「Giga Pocket」のTV録画機能はとても使いやすかったし、「Movie Shaker」などのバンドルされていたソニーオリジナルのソフトも面白かった。使っていくと何かしらの発見があるようなPCに仕上がっていました。本来、誰がつくっても同じようなものしかつくれない”パソコン”という製品を、ユニークなものにしようという意欲的な試みが随所に見られました。

「技術空洞」の前半は、そういったVAIOが開発現場でいかに生まれてきたかということについて、書かれています。Rシリーズの所有者として特に興味深かったのは、スタンバイ状態からの復帰を安定化させるために重ねられた努力や業務用レベルの高画質化を追求する姿勢についてのくだりで、自分の使っていた製品がこのような意欲的な現場で生まれたと思うとうれしくなります。

という前半とうってかわって、中盤からはVAIOやソニー全体が沈んでいく暗い話になります。積み上げられる失敗の数々。その結果としての業績の不振。特に技術者が逃げ出しているというのは最も深刻で、そうした優秀な人材が外国メーカーに行ってしまうという状況は、日本の危機と言う他ありません。

なんだかんだいって、ソニーは今でもある種の信仰によって支えられていると思います。しかし、外部のイメージと実態の乖離はこの情報が飛び交う時代には隠し通せませんし、ソニーの時代を体験していない若い世代にはブランドイメージも希薄かもしれません。ソニーは以前のような、新しいことにチャレンジするというイメージを取り戻せるのでしょうか。

もし、単なるOEM先ブランドとして生き残るくらいなら、存在意義を失った企業として消えていく方がソニーにはふさわしいように思います。ソニー本体がSCEに吸収されるとか。

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2006年02月23日

ローカルヒーロー大図鑑

4880651702ローカルヒーロー大図鑑
ブルーオレンジスタジアム
水曜社 2006-02-24

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東京とはちがって、地方は今大変なんですよ。率直に言うと、金がねえということなんですがね。そういう状況の中で、頭を絞ってなんとかしようといろいろもがいているうちに、味わい深いものが生まれてくるわけです。

ローカルヒーローというのもそのひとつで、そこには真剣な人々の思いが込められています。苦しんでいる人や困っている人を助けようとしないで、どうして人間といえるか。熱く行け。この本も熱い気持ちで読みませう。

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2005年12月09日

「奪われる日本」を読む

文藝春秋十二月号を買いました。警告リポートの「奪われる日本 『年次改革要望書』 米国の日本改造計画」という記事が読みたかったからですわ。「奪われる日本」というタイトルがついてますが、なにが奪われるんでしょうね。貞操でしょうか。黒船によって股を強引に開けさせられた日本が、ついにその貞操を失おうとしているのでしょうか。う~む、わかりませんねえ。早速、読んでみました。

なぜこの記事に目がとまったかというと、筆者の関岡英之という人の著作『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』を読んだことがありまして。なかなか興味深い内容だったので、印象に残っているんです。ざっとその概略をいえば、アメリカは「年次改革要望書」という文書を毎年日本につきつけて、日本をできるだけアメリカのビジネスがしやすい環境に変えていこうという内政干渉にも等しいことをおこなっている、ということを明らかにした本です。アメリカの要求に対し、日本政府は従順にアメリカの意向に従うかたちの規制改革を進めており、それによる弊害についても述べられています。この本を読み終わった人は、”属国”という言葉を思い浮かべずにいられないでしょう。

実際、アメリカがいかなる改革を日本に要求してきたかは在日米国大使館のサイトで誰でも見ることができます(「年次改革要望書」)。堂々としているというか、さすが情報公開が徹底しています。

今回の文藝春秋の記事では、郵政改革によってなされた簡保市場の解放の次に待っているのが、国民健康保険の解体であることが示唆されています。アメリカでは、貧しい人が病気をすると、多額の医療費を払うことができずに破産することが多いと聞きます。つまり高い医療を受けられるのは富裕層だけで、経済力のない階層とは明確に差別化されているわけです。そういうことは、お金がなくてもある程度の医療を受けられる恵まれた環境にある日本の中にいるとなかなか実感できないことですが、健康保険が民間に開放されるようになれば、徐々にアメリカのようなシステムに近づいていくでしょう。これは反面、金さえあれば高度な医療も受けられるわけで、地獄の沙汰も金次第というわけです。いかがですか。

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2005年11月02日

ベクシンスキーの世界

4845711451ベクシンスキー (A TREVILLE BOOK)
ベクシンスキー
トレヴィル 1997-07

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芸術の秋ですからね。画集でも紐解きましょうか。

僕の好きな画家にベクシンスキーという人がいまして、この人ポーランドの人で、おそがいような、それでいてどこかユーモラスにも感じる、じっと見ているとあやしげ~な気持ちにさせてくれる絵を描きます。今年2月に刺殺体で発見されました。強盗目的の少年に殺害されたようです。

高齢で、ポーランドの人なので、ナチスドイツの占領も体験しています。絵画にもその影響はあるのだろうが、あまりその視点からの鑑賞は、彼の絵の面白さを見逃すことになると思う。

最近、廃刊になっていた日本語版画集が復刊されました。

Zdzislaw Beksinski …… 公式サイト (音が出ますよ)

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2005年09月06日

ラテン・アメリカは警告する

4794806434ラテン・アメリカは警告する―「構造改革」日本の未来 (シリーズ「失われた10年」を超えて―ラテン・アメリカの教訓)
内橋 克人 佐野 誠
新評論 2005-04

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『ラテン・アメリカは警告する 「構造改革」日本の未来』という本を読みました。「構造改革」という言葉に目新しさを感じる人もいるかもしれませんが、他の国などではけっこう昔からおこなわれていて、その先行例のひとつであるラテン・アメリカを取りあげ、構造改革がいかなる結果を生みだしたのかを考察しています。同様の内容のことは、以前にアルゼンチン化というエントリーでも取りあげたので、参照していただければと思います。

いろいろ興味深い話がのっていますが、全体的な印象を述べれば、公正さや平等が失われた社会からは活力は生まれないということです。かつては日本以上の経済力をもっていたアルゼンチンやチリが、急進的な自由主義政策を導入したために衰退していったその歴史は、そのことを如実に示しています。

ただ……。人は痛い目にあわないとわからないものだから、この本の主張が理解されるには、あと10年以上の失われる年月が必要でしょうか。

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2005年09月03日

i am legend

4150411557アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫 NV マ 6-5)
尾之上浩司
早川書房 2007-11-08

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今もっとも元気なモンスターといえば、ゾンビ。いろんな映画にひっぱりだこで、死んでるひまもありゃしない。

そんな綿々と続くゾンビ映画史にそびえる金字塔といえば、やっぱりロメロの三部作。そしてそのロメロゾンビのルーツをたどれば、リチャード・マシスンの小説『地球最後の男』に行き着く。というわけで、『地球最後の男』を読んでみました。

地球上が吸血鬼に埋め尽くされた世界。主人公の男はただ一人、孤独な戦いを続ける。勝ち目のない戦い。終わりのない戦い。恐怖と絶望。かつて親友だった男も、今では”やつら”の一人にすぎない。

永遠に続くと思われたそんな日々。だが、変化は起きつつあったのだ……。

怖い小説である。主人公の置かれた状況も怖いが、結末はもっと恐ろしい。それを書いてしまえば興を削ぐことになるが、その結末によって、この作品はホラーという領域を超えてしまっている。

”新しい”ということはどういうことだろうか。”新しい”という言葉は魅力的だ。特に現代のような閉塞された時代であれば、”新しい”ことはとりわけ甘美な響きをともなう。だが、本当の意味で”新しい”ことはそれほど優しいものだろうか。本当に”新しい”ものは、きわめて不愉快なものではないか。もしかすると、今あなたを胸糞悪い気分にさせているものこそが本当に”新しい”ものであって、あなたの気持ちを快くさせるものというのは、実はこれまでの文脈とそんなに変わらないものなのではないか。

ちょっと目先を変えただけの新しさ、私たちはそのぐらいの新しさを欲しているのではないか。それはしょせん偽りの新しさだが、本当の新しさに耐えられる感性をそなえている人はどれだけいるか。本当に新しいことは、それまでの価値が通用しない、怖い世界でもある。

政治的に聞こえる? それは当然。ロメロはこの小説を、革命についての物語と語っている。

この小説に登場するのは吸血鬼だが、ウイルスの感染で増殖していくところなど、後のゾンビの造形に強い影響を与えた。吸血鬼伝説に合理的解釈を与えているところも面白い。

エントリーのタイトルは『地球最後の男』の原題。なお、現在『地球最後の男』は絶版状態。早川書房さん、復刊してください!

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2005年08月14日

危ない食卓

4309204414危ない食卓 スーパーマーケットはお好き?
矢野 真千子
河出書房新社 2005-06-11

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心頭を滅却すれば陽はまた昇る。めざめよ、ベータ!!

あー、特に意味はないです。

本の紹介です。『危ない食卓 スーパーマーケットはお好き?』という本を読みました。『危ない食卓』という題名から、自分の切り取られた脳味噌がメインディッシュとして目の前の皿に盛られているのを想像した方が大半だと思いますが、そういう内容ではありません。ちゃぶ台の端にカミソリが付いているから、気をつけないと危ないよという話でもありません。

本を執筆したローレンスさんは、イギリスのフリージャーナリストで、主に「ガーディアン」紙の消費者問題についての記事を執筆されているそうです。この本は、現代の食の現場がどうなっているかについて、綿密な取材を基にして書かれています。

この本で扱われている食材は、チキン、レタス、サラダ、パン、リンゴ、バナナ、コーヒー、エビなど身近なものばかりです。それらの食材がスーパーに並ぶまでにどのような経緯を経てきたかを見ていくと、高度にシステム化された食の現場が見えてくる。そしてその結果として生じた、損なわれる食の安全性、環境破壊、低賃金労働によってささえられる現場、食品の多様性の喪失、消えていく商店街、大企業の支配されるフードシステムといった問題が語られていきます。

留意すべきは、筆者はグローバル化そのものに反対しているわけではないことです。その流れを認めた上で、政府に対してはこういった問題を放置せず、適切な対策を実施すべきだと述べているのです。そして個人に対しては、買い物のしかたを変えることをすすめています。買い物パターンの基本を「地元で」「季節のものを」「直接手に入れる」の3点に変えていくことを。

僕も少し前までは、食べられりゃなんでもいいやって感じで、食にたいしての関心は薄かったんですが、いろいろ思うところがありましてねえ。やっぱ、長生きしたいっすよ。そのためには食を軽視していてはいかんだろうし、食べたものが自分自身のからだをつくっていくことを考えると、なにを食べるかということは重要な選択だなあと。

この本の事例はイギリスの話なんですけど、サッチャーの後追いみたいな小泉改革が進んでる日本でも十分通用する話だと思いますよ。

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2005年08月13日

青空文庫

B00008CHB0ねじ式
石井輝男 つげ義春
ケイエスエス 2003-03-28

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石井輝男監督といえば、「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」が最初に思い浮かびます。あんなのよくつくったな、と。まあ、職人肌の人なので、いろいろな作品を手がけられているんですが。それにしても、深作欣二といい今度の石井監督といい、骨のある日本映画を撮れる人がいなくなっていくなあ。おかあさ~ん。

昨日のつづきで、電子書籍について。

二代目てのり青空文庫には、「『松岡正剛の千夜千冊』と青空文庫」という面白いコーナーがあります。これは、書評サイトとして有名な『松岡正剛の千夜千冊』と青空文庫をリンクさせたもので、千夜千冊の書評を参考にして、青空文庫の本を選ぶことができるというものです。これって、とてもいいと思う。青空文庫は、名前だけは知っているけど、その作品は読んだことがないなあという作家が多いので、どれを選ぶかで結構迷ってしまうんですよ。そんな時、信頼できる書評があると、とっても助かるんです。

僕も青空文庫の中から、Palmで読めるおすすめの作品を挙げてみます。役に立つかはどうかはわかんないけれども、自分が読んで面白いと感じたものです。

『後世への最大遺物』 内村鑑三
『外套』 ゴーゴリ
『悟浄歎異』 中島敦
『おじいさんのランプ』 新美南吉
『鉄鎚』 夢野久作

挙げていけばきりがないけれど、短めの作品で、わりと有名どころを中心に。そのうち、書評も書いてみようかなと思っています。『ドグラ・マグラ』が現在作業中のようですが、あれは長編なので大変でしょうね。

■電子書籍、急ピッチで拡大 昨年の販売805万冊に倍増 (FujiSankei Business i.)

中国で、登場してから5年足らずの電子書籍の市場規模が急ピッチで拡大している。昨年、中国で販売された電子書籍は805万冊と前年実績の2倍に急拡大した。

 中国で発行されている電子書籍は今年4月末現在で約14万種と、世界でもトップレベルにあり、電子書籍の読者は1000万人にのぼると推計されている。

中国では教科書の電子化がすすめられていて、松下のΣBookもそれをビジネスチャンスとして参入しているようです。たしかに、中国が日本並みに紙を消費していったら、あっという間に木がなくなってしまいそう。

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2005年08月12日

電子書籍

4806119571eBook時代 はじまる! 「電子の本」が変える読書革命
鈴木 雄介
中経出版 2004-02-22

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空を見上げたら、セミに放尿プレイされました。

さて、Pal Macさんの「青空文庫パーム本の部屋」は、Palmを使い始めたころによく利用させてもらいました。読みたいと思ったものは一通り読んでしまったので、最近はあまりCLIEを読書用に使っていなかったのですが、突然の閉鎖には動揺しました。しかし、コンテンツは二代目てのり青空文庫に引き継がれるとのこと、胸をなでおろしました。さびしくはありますが。

電子書籍端末としてのCLIEについての印象は、悪くはないけど、という感じです。ワイドハイレゾはそうではないPalmよりも、かなり読みやすくなったと思います。実際、PCで読むよりもずっといい。しかし、紙の本を読むのとくらべると、表示領域の狭さというのがネックになっています。

たしか『eBook時代はじまる! 「電子の本」が変える読書革命』に書かれていたと思うのですが(記憶がいまひとつです、すいません)、人間の眼は文字を一つ一つ追っているだけでなく、その前後の情報も無意識的に脳は認識しているそうです。たとえば四コママンガならば、一コマ目を見ているとき、すでに脳内では二コマ目以降つまり四コマ目のオチも含めた情報全体で認識されているということになります。ですから、CLIEなどで四コママンガを一コマづつ見ていくやり方だとあまり面白く感じないのは、ここらへんに理由があるのではないかと思います。笑うという行為が満足になされるには、脳内で笑うための準備がなされる必要があるのではないかと。くわしいことは僕の言うことなんかをあてにせず、茂木健一郎さんとかにきいてください。ジェフ・ホーキンスでもいいね。(逃げの一手)

なんとなくCLIEでの読書体験は濃密さに欠ける気がするのです。読み終えた本の印象が薄いというか、内容がどうも記憶に残っていかない。それはやはり、情報を限定された部分として受けとっているために、うまく全体を統合できないからだと思うのです。逆にいえば、表示領域さえ十分に確保できれば、電子書籍は紙の本と同様の感覚で読むことができると思います。すでに、テキストを電子媒体で読むという行為自体は日常的になっているわけですから。

とはいえ、携帯で小説を読むという、表示領域が限られていても平気なツワモノたちも出てきているわけですが。

いまよむ……ケータイ向け総合電子書籍サイト

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2005年08月09日

週刊プレイボーイ

B000Z7XICU熊田曜子 陽光スイーツ
熊田曜子
ラインコミュニケーションズ 2008-01-20

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岐阜県出身

この暑い夏。世界中の暴徒が次々と岐阜県に集結しつつある。岐阜といえば、政治経済の中枢を担う首都機能を一気に掌握せんとする野望を秘めた地域であり、グローバル化による大国の横暴に不満を抱いた分子の巣窟となり始めている。これに危機感を抱いた当局は、急遽、機動隊を派遣。関係者の緊張も、最高潮に達しつつある。世界暴徒選手権は、まさに一触即発の局面をむかえているといえよう。

そういうわけで、皆さん来てくださいね。血で血を洗う世界暴徒選手権に。

さて、今週の『週刊プレイボーイ』についてなんですが。『週刊プレイボーイ』の見出しはいつも味わいがあるんですが、今週号もなかなか。

「戦後60周年スペシャル 総力特集 オレたちの愛国白書」

というのはまあいいんですが、そのとなりに書かれているのが、「『靖国参拝』から『憲法9条』まで、18~28歳・200人・20項目、大アンケート!」。おいおい、また若いふりかよ。18~28歳というのが『週刊プレイボーイ』の読者層じゃないことは、もうみんなわかってるよ。いつまでチョイ悪オヤジ気分なんですか。どうして素直に、「若いヤツの意見も聞いてみよう」というふうに書けないのですか。

でも、気持ちはわかります。編集部の若い読者を開拓したいという気持ち、痛いほどよくわかります。たぶん若い人のエロはネットに吸収されつつあるのでしょう。雑誌は苦しいと思いますよ。

そうはいっても、”オレたちの”はどうかなあ。ノリが明らかに団塊世代っぽいだよなあ。そうはいっても、こんなツッコミ甲斐のある雑誌がなくなっては困るので、若い人は『週刊プレイボーイ』買ってあげてね。ネット上のエロのような強い刺激を日々受けていると、いざという時に使えなくなるぞ。水着程度でイメージを盛り上げるのも、いいトレーニングだぞ。と、オヤジのふりして若者たちに向けて説教してみたりして。

『週刊プレイボーイ』に限らず、イメージ向上のために、もっとも経済的に貢献している層が、いないことにされる現象は時々ある。アニメや特撮では、大きなお友達の存在は触れられない。男中心のイベントなのに、前の方に少しだけ座っている女性ばかりをフレームに入れて、さも女性が多く参加しているように見せかけるテレビのやり口もある。

金を払ってるのに、軽く見られるなんて。

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2005年06月25日

Amazonマーケットプレイス

Amazonマーケットプレイスで、本を売ってみる。

数冊しか売っていないのでたしかなことは言えないが、全体的な印象としては売れる本は売れるが、売れない本は売れないということだ。ってわざわざ書くほどのことはないか。つまり売れる本というのは、やはり旬のもので、これは生鮮食品と変わらない。もちろんマニア向けや絶版本というのは高い価値があるが、どちらかといえばそれは古本屋やYahoo!オークションの得意領域という感じだ。

Amazonマーケットプレイスはその時期のトレンド本を売るのに適している。そういった本を売る場合は、BOOK OFFに持って行くよりもAmazonマーケットプレイスに出品するのがいいと思う。

本の状態は簡単な説明文で伝える。出品者を評価するシステムもある。だが、本の状態や出品者の評価よりも、わりとオートマチックに出品価格の安いものから売れていくという印象。だから、出品価格は慎重に決める必要がある。

出品価格を決める時に考慮すべきは、送料だ。薄い本ならば、クロネコメール便。そうでないなら、郵便冊子小包がいい。送料を比較的安く抑えられる。包装はぷちぷちを使うのがいいのかな。僕はダイソーのぷちぷち付き封筒を使った。

Yahoo!オークションとちがうのは、出品者と購入者のやりとりが少ないこと。事務的に対応できるのは楽だが、購入者からのフィードバック評価があまりないので、本当に届いているのか少し不安になる。まあ、便りがないのは良い便りと思いましょうか。

出品者を見ると業者さんが多いみたい。薄利多売で業者さんは安い価格設定ができるが、個人での出品の際は、採算ラインから考えてある程度高く売れる本でないと、出品しても労力に見合わないかも。そんなふうに思いました。

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2005年06月04日

賢く節約!くるまマル得メンテナンス

4471163957賢く節約!くるまマル得メンテナンス
牧野 茂雄
高橋書店 2002-08

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車って金かかるんですよね。車検とか高いですよね。ユーザー車検なんてのもありますが、一番金とられるのは結局のところ税金だったりするわけです。車にかかる税金の多さの裏には、絶対なにかありますよ。不当に利益を得ているやつらが。

この国の構造への怒りはともかく、メンテナンス費用をケチって事故を起こしては元も子もありません。故障した車が凶器であることは、三菱自動車の事例を挙げるまでもないことです。しかしすべて業者まかせでは、必要以上の出費を強いられかねません。車に日常的に乗っているなら、少しは車のことを知っておいた方がいいに決まってます。何よりそのほうが楽しいと思う。

というわけで、上記の本を一冊持っておくと、なにかと便利なのではないでしょうか。

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2005年05月31日

雑誌の見出し

僕が新聞で一番目を通す場所、それは社会面でも経済面でも政治面でもない。広告の雑誌見出しのスペースだ。雑誌自体はほとんど買わないが、見出しは週刊新潮や週刊文春など必ず目を通す。雑誌の見出しさえ読んでおけば、世の中を知るにはまあ十分じゃないでしょうか。

そんなふうに雑誌の見出し好きな僕が最近気になっているのは、『すてきな奥さん』という雑誌。歴史ある、主婦と生活社発刊の雑誌だ。最新号は特集「みんな、できた!食費1か月1万円生活」を中心に、実用的な内容が満載されている。一貫したコンセプトは節約。節約に一生懸命な奥さんというのは、”すてきな”というイメージから遠いような気もするが。

それに対抗するかのように『おはよう奥さん』という雑誌では、「冷蔵庫徹底使いこなしで食費月1万円台生活」という特集を組んでいる。こちらのコンセプトも節約。

可処分所得に余裕がないとき、最初に削減されるのは衣料品、書籍、CD、家電あたりだろうか。そうした一般的な優先順位からいくと、食費を削らなければならない生活というのはかなり苦しい段階という印象がある。安い食材を使うという手もあるが、外国産の食材にはある程度のリスクがある。それに、食費を抑えたために健康を損なっては元も子もない。そもそも、経済大国とされる国に生きる人々の食生活が月1万円というのは奇妙な感覚にとらわれる。

雑誌の売れなさ具合はかなりのものらしいが、雑誌が社会を反映しているというのは今でもあると思う。上記の雑誌の見出しからは、若い人が結婚しない理由や、1万円と1万円台はかなりちがうとか、節約を突き詰めるなら雑誌自体を買わないという選択肢が生まれるのでは、などといったことを考えてしまった。

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2005年05月24日

おしえて!!FLASH

4839919615おしえて!!FLASH 8 (毎コミおしえて!!シリーズ)
まつむら まきお
毎日コミュニケーションズ 2006-05

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Flashに挑戦したいと思ったら、この本を片手に進めるのがいいんでは。着実にステップアップしていけるように書かれています。

あと、WACOMのタブレット(A5サイズ位のもの)は欲しい。けっこう高いのが難ですが。

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2005年05月19日

ゲームブック

4789301141パンタクル1.01
鈴木 直人
創土社 2002-05

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80年代、ゲームブックというものがブームになった時期がありました。ゲームブックというのは、分岐型アドベンチャーゲームを本のかたちで表現したものといいますか、読者の選択次第でストーリーが変化していくシステムが取り入れられたエンターテイメント性の高い小説です。

読者自身が物語の主人公となって読み進めていくと、次々と選択を迫られます。たとえば、「旅の仲間を食べますか?」という選択肢があったら、「食べるなら15へ」、「食べないなら44へ」といった指示がつづき、自分が選んだ番号の箇所へと進みます。時には敵が現れて戦闘になることもあります。戦闘はサイコロを何回か振ることで、勝敗が決定されます。サイコロでランダム性を確保するわけです。

物語は剣と魔法のファンタジー世界を背景にしたものが多いですが、実際には様々なジャンルがあります。一時期はかなりのブームで出版点数も多かったのですが、ブームはしょせんバブルなわけで、当然のごとくやがて市場は急速に縮小していきました。元々、本と鉛筆とサイコロというアナログの極みみたいなものですから、圧倒的な表現力を獲得しつつあったビデオゲームに太刀打ちできるわけがありませんでした。

僕もゲームブックをやりこんだ時期があり、その時は自分でつくってみたりもしました。今でも面白かったと思うゲームブックは、スティーブ・ジャクソンの『ソーサリー』シリーズ、鈴木直人の『ドルアーガ』三部作、『シャーロック・ホームズ 10の怪事件』、岡嶋二人『ツァラトゥストラの翼』といったところでしょうか。特に鈴木直人のゲームブックはすべて出色の出来です。

最近、それら名作とされたゲームブックの復刊が相次いでいます。といっても、昔と比べたら細々としたものですが、昔のファンからしたらそれでいいんです。細々ながら、死なない程度に続いてくれたら。出入りが激しい出版業界では、一度絶版になってしまうと、ふたたびその本を手に入れるのはとても困難です。マイナーな本は特に。僕自身も家にあったゲームブックを大量に処分してしまったことがあって、現在手元に残っているものは多くありません。

ビデオゲームの次世代機をめぐる争いは熾烈をきわめそうな勢いですが、その流れとはまったくちがうゲームの流れとして、ボードゲームやゲームブックの復活という動きも興味深いと思います。複雑になりすぎたビデオゲームの反動でしょうか。現実的な問題として、人々がゲームにそそぐことのできる時間が縮小しつつあるのに、ゲーム自体はプレイヤーにより多くの時間を要求してくるというずれがあるように思います。最近のゲームは面白くなくなったというより、面白くなりすぎました。

そんなわけで、昔ゲームブックファンだった人たちは久しぶりに遊んでみるのもいいんではないでしょうか。

創土社……ゲームブック復刊に奮闘する熱い出版社
鈴木直人伝説……最高峰の国産ゲームブックをつくりあげた男の伝説が今ここに
復刊ドットコム……復刊の願いは終わらない
忘れじの80'sカルチャー 「ゲームブック」が復活の兆し!?……「週刊!エキサイト」の記事
スコット氏のサイト……『ソーサリー』シリーズを思い出させる、Palmゲーム「ゴブリンの洞窟」をつくられたスコット氏のサイト

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2005年05月06日

泣き虫弱虫諸葛孔明

416323490X泣き虫弱虫諸葛孔明
酒見 賢一
文藝春秋 2004-11-25

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『三国志』を最初に読んだのは、小学校5年生の時に岩波少年文庫で。登場人物が多すぎてよくわからなかったが、とりあえず孔明はすごいと思った。神謀奇策の超絶軍師にして、風向きさえも自由自在にあやつるスーパーマン。それでいて、最後まで誠実に主君のために力を尽くし、あくまで強国の魏に立ち向かう姿は、悲劇的で美しい。判官贔屓の日本人遺伝子を刺激せずにはいられない存在だ。

だが僕も中学生ぐらいになるとひねてきて、一見すると一点の隙もなさそうな孔明という存在に、どことなくある種の欺瞞を感じるようになった。それは孔明の主君、劉備にもいえることだが、そんな完璧な人間なんているわけないよな、という素朴な思いだ。「どうせ裏でなんかやってるんだ。大人なんて、大人なんて、みんな汚いんだっ」という、思春期特有の感情なんかもないまぜになりながら、最初に読んだときとはちがった角度で『三国志』を見るようになった。

孔明と劉備を冷めた目で眺めてみると、その偽善性やわざとらしさが見えてくる。なぜ処刑寸前の呂布に、「お前が一番信用できない」と劉備は指摘されたのか。南蛮征伐の際に、孔明がおこなった南蛮人大量虐殺は人倫にもとる行為ではないのか。最初に『三国志』を読んだときには蜀ファンであった僕は、孔明の冷酷と劉備の偽善に気持ち悪さを感じて、いつの間にか呉のファンになっていた。

今まで述べてきたのは物語としての羅漢中作『三国志通俗演義』についてだが、歴史書としての陳寿作『三国志』に目を向けると、孔明の能力自体にも疑問符がついてくる。ぶっちゃけ、孔明って天下とれなかったじゃん、とか、単なる地方軍閥の参謀でしょ、どうしてそれが天才軍師なの、などという身も蓋もない感想をもつ人がいてもおかしくはない。

『泣き虫弱虫諸葛孔明』は、理想化された孔明と現実に存在した孔明という二つのリングを、知恵の輪のように、連環させた作品だ。特筆すべきは、孔明を人間的に描いていながらも、孔明の凄さも味わえることだ。極端なまでの変化球と見せて、実はど真ん中のストライクとでも言おうか。

隆中の変人として土地の人から嫌われていた孔明が、劉備の求めに応じて出廬するまでが描かれているが、これがもう面白くてしかたがない。孔明の口から頻繁に出てくる言葉が”宇宙”。常人には理解しがたい独自の宇宙論と自己演出美学で、もう何が何だかわからない存在になっていく。軍師は爆発だ! ってなノリで進むストーリーは、『三国志』にもちょっと飽きたかなあという人にこそ読んで欲しい。

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2005年04月25日

サン・ジョルディの日

最近のもっとも重要なトピックは、今年も4月23日の「サン・ジョルディの日」が盛り上がらなかったことだ。一応説明しておくと、「サン・ジョルディの日」とは、スペイン・カタルーニャ地方の守護聖人サン・ジョルディを祭る日で、女性は男性に本を、男性は女性に花を贈り合うことが慣習になっている。

単に、なんらかの手違いで僕のもとに本が届くのが遅れている、世のアベックどもはみんな本と花を贈り合っているのを僕が知らないだけといった事情から、盛り上がっていないと誤って認識している可能性はある。だが、チョコを一気に売っちまおうぜの日に比べたら、静かなものだ。ひとりものへのプレッシャーもない、平穏な一日だ。本屋さんだけが、「ああ、今年もだめだったか」と嘆きつつ、ポスターを剥がすぐらいのものだ。

聖なる祝祭日には、資本の論理がつきまとう。クリスマス、バレンタインデー。仏教は安くていいねえ、お盆は金かからないもんねって思ったら、葬式でごそっと持っていかれるのね。

そもそも、祝祭というのは精神的なものだから、物を贈るという慣習は後から附帯されたと考えるべきだろう。「サン・ジョルディの日」が盛り上がらないのは、本屋と花屋がうまく事を運ぶことができなかった、いわば広告の失敗といえる。

だが、本も花もけっこう贈りにくいプレゼントだ。本は個人的な嗜好のものなので、相手が好みそうな本を選ぶとなるとなかなか骨が折れる。花は、花言葉を調べておかないとあらぬ誤解を受ける恐れがある。なのに花言葉ってやつは、世界の各地域によってばらばらで、グローバルスタンダードがない。

さらに難点は、バレンタインデーのように片思いの相手にチョコレートを贈って告白、というドラマ性に欠けることだ。サン・ジョルディの日は、贈り合うということから、すでに恋仲ができあがっちゃってる人対象ということになる。すでにある愛をより深くするという趣旨だ。人を選ぶ日なのだ。バレンタインデーより、クリスマスに近いと言えようか。

結論がでたようだ。サン・ジョルディの日がどうして盛り上がらないのか。欲望全開のクリスマスに比べて、サン・ジョルディの日は、知的に過ぎてハードルが高いからだ。さらに、本と花という経済的な商品がメインで、儲からないので資本側ものってこない。

最後に、女性のために、彼のこころをわしづかみにする本を紹介して、このもてなさそうな感じの文章を終わりとしたい。是非、愛する男性に贈ってあげてほしい。

4043170017ゲバラ日記 (角川文庫)
Che Guevara 高橋 正
角川書店 1999-02

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2005年04月16日

『半島を出よ』に興奮する

4344410017半島を出よ 下 (3) (幻冬舎文庫 む 1-26)
村上 龍
幻冬舎 2007-08

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「もっともらしい理屈や意見は平穏無事の時のことだ。いざとなると人間は卑怯か卑怯でないかに分かれる。なまじ知恵があったり学問のある上層の者が事変に無力になるのはそのためだ」(大石内蔵助 大佛次郎『赤穂浪士』より)

以前にも紹介した『半島を出よ』を読み終えた。力作という他はない。北朝鮮特殊部隊による福岡侵攻と、それによって露わになる日本の正体を描いた上巻。日本から見捨てられた福岡で繰り広げられる、異形の若者たちによる抵抗戦を描く下巻。そして上・下巻を通じて語られる、北朝鮮側からの視点。綿密な取材に裏打ちされた物語は、リアル感をもって迫ってくる。壮大で力強く、映像的な小説だ。

物語は、様々な立場の人物からの視点が入れ替わるようにして進行する。研ぎ澄まされた刃物のような凄みをみせる、北朝鮮エリートたち。彼らの軍事に特化された合理性は、場当たり的な日本政府の意志決定システムを圧倒し、あっさりと福岡占領を達成する。支配される側の、福岡の人間による視点からの描写は、息苦しくせつない。福岡の公務員が、北朝鮮側にむしろ積極的に協力しようとする姿は、芯となるべきものを持とうとしなかった戦後の日本人を象徴するようだ。

思えば、現代の日本は死や苦痛というものを限りなく排除することによって、成立している。マイナスイメージが付属するものに対しては、とりあえずなかったことにして、ただただ先を急いでいる。だが、日本が抱えている問題の深刻さに日本人はとっくに気づいており、隠蔽されているものがいつかすべて露わになるのではないかという不安に揺れている。そうなれば、冒頭に挙げた大石内蔵助の言葉ではないが、本性むきだしの動物的な世界にならざるをえない。他人の本性を見るのも嫌だし、自分自身の本性が露出されるのが何より怖い。

北朝鮮軍に抵抗する若者たちは、社会からいわば、なかったことにされてきた者たちだ。常に社会からの攻撃にさらされてきた存在だ。彼らは最初、今まで自分たちを攻撃してきた日本を叩きつぶそうとする、北朝鮮軍の側にシンパシーを抱く。だが、北朝鮮軍が日本の社会をはるかに超えるレベルで、異なる価値観を排除しようとする論理で動いていることに気づき、抵抗に立ち上がる。当然ながら、彼らは日本を守る、福岡を守るために立ち上がるわけではなく、自分たちのために立ち上がるのである。

つまりこれは、社会で居場所をなくしている若者たちへの、村上龍なりのメッセージと言えるかもしれない。生き延びよ、と。

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2005年04月04日

東海発 バカルト紀行

4833101092東海発 バカルト紀行
大竹 敏之
風媒社 2004-06

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”バカルト”とは「おバカ」で「カルト」な観光施設を指す造語。しかし、ここでいう「おバカ」とは「とことんスゴイ」という意味で使用されており、全体的には「すっごく個性的」という意味。

というのが、本の帯に書かれている”バカルト”の用語解説。代表的なのが、秘宝館。この本は、東海地方(一部、北陸地方も)のバカルトを多数、紹介している。

東海地方に住んで長いが、初めて聞く場所も多い。また、今まで単なる観光施設としてしか見ていなくて、バカルトとして認識していなかったところもあった。

バカルトとして認識していたのは、桃太郎神社、田縣神社、コスモアイル羽咋、秘宝館ぐらい。言われてみれば、というのが関ヶ原ウォーランド、お菓子の城、藤橋城、伊勢・安土桃山文化村。実際に足を運んだことのある場所もいくつか紹介されていた。

知的好奇心をくすぐるような文章と、バカルトによくマッチした味わいのあるマンガがいい感じ。名古屋人は「美宝堂の男のコって大きくなったな」という話題を必ず一度は口にしている、というのが笑える。

この本読んで、もう万博行ってる場合じゃない、五色園行かないと、という気分になった。ゴミアートの楽園として紹介されている場所も気になる。

バカルトがなくなっても、時代の流れと言われりゃそれまで。されど、すき間なき世は苦しけり。

東海発バカルト.com

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2005年03月27日

頭がいい人とEQ

4569635458頭がいい人、悪い人の話し方 (PHP新書)
樋口 裕一
PHP研究所 2004-06

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久しぶりに本屋に行ったら、上記の本とその類似本がたくさん平積みにされていた。「頭がいい人」本とでも呼べばいいのだろうか。出版業界の必死さと志の低さがよく現れている光景だった。

今、なぜ「頭がいい人」なのか。私は頭が悪いから損してるんだと思っている人が多いのか。それとも、私は頭がいいのに評価が低いのは、話し方などの表現がまずいからだと思っているのか。そもそも、頭がいい悪いとはどういうことか。頭ばかり肥大化させてどうするのか。

数年前、EQというのが言われていた。EQ(Emotional Quality:情動指数)は”こころの知能指数”とよばれ、IQ(Intelligence Quality:知能指数)では計ることのできない、人生を成功させるために必要な能力のことだ。とはいっても、僕自身、”こころの知能指数”ってなに?って感じでよくわかってはいないのだが。場の空気を読む能力のことだろうか。僕は空気読めって言葉は最低だと思っているが、たしかに日本社会、特に企業社会ではもっとも必要な能力のひとつだ。

そのEQがまわりまわって、またIQに戻ってきたわけか。ただ、EQにしろ、IQにしろ、頭がいいにしろ、目指すところはいっしょ。人生の成功だ。頭が良くても社会的成功にめぐまれない人はいくらでもいるが、こういった本を読む人が、人生に失敗してもいいから頭がいい人になりたい、またはそう思われたいと願っているわけではないと思う。

EQがもてはやされた頃は、バブル崩壊後の経済的低迷期だった。そして現在の「頭がいい人」本。両者にはちがいもある。それは、「頭がいい人」本が、頭がいいという状態を目指すより、頭がいいと他者から思われることによりウエイトが置かれていることだ。言ってみれば、自分はバカのままでもかまわない、だけど周りからは頭がいいと見られたいという欲求に応える本になっているのだ。

それだけ数年で人々が求める水準が低下したとも言えるが、それよりむしろ大きいのは、日本人の自信喪失と、もうひとつは成果主義の混乱にみられるような人を評価するシステムの混迷という背景だろう。さらに視界を広げれば、教育の惨状という風景が見えてくる。

『「頭がいい人」と言われる文章の書き方──文章のうまい、ヘタはここで差がつく!』なんて本もある。このブログの文章で、毎回頭の悪さを露呈している僕にはちょうどいいかもしれない。

4062562928EQ―こころの知能指数 (講談社プラスアルファ文庫)
Daniel Goleman 土屋 京子
講談社 1998-09

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2005年03月21日

半島を出よ

4344410009半島を出よ 上 (1) (幻冬舎文庫 む 1-25)
村上 龍
幻冬舎 2007-08

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『希望の国のエクソダス』の続編的な位置づけの作品なのだろうか。作品内では、すでに日本の財政は破綻してしまっている。そんな状況で発生した、北朝鮮兵の福岡ドーム占拠事件から物語は始まる。面白いかどうかは読んでみないとわからないが、今人々が求めている題材に真正面から取り組む姿勢は評価したい。サッカーや経済のエッセイ、『13歳のハローワーク』といった本を書くより、小説を書くことは遙かにエネルギーを消耗することだろう。

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2005年03月10日

phantasmagoria

B00005EDI7a piece of PHANTASMAGORIA【劇場版】
あがた森魚 かの香織 たむらしげる
バンダイビジュアル 1999-03-25

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皆さんは絵本なんて読みますか? 僕は、以前はまったく興味がなかったのですが、親戚の子にプレゼントするための本を選ぶ機会があって、何冊か物色するうちに出会ったのがたむらしげるさんの絵本でした。

たむらさんの絵本は、読んでいて心がわくわくしてくるような作品が多く、本当の想像力とはこういうものを言うんだなあという思いを抱かせます。作品はすべて、たむらさんが子どもの時に見た夢が原点になっています。たしかに不思議なロボットや博士など、男の子なら誰でも夢中になるようなキャラクターがいっぱいです。

ファンタスマゴリアは、個々のたむら作品を結ぶ、ストーリーをもった惑星世界です。たむらさんは絵本だけでなく、イラストも描き、映像もつくるなどとても幅広い表現をされていますが、それらの作品にはしばしば同じキャラクターが様々なかたちで登場します。ファンタスマゴリアに登場するものは、僕たちが住む地球で見たことがあるような、でもどこかちがうような奇妙な味わいに満ちています。

個人的におすすめしたいたむら作品は、CD-ROM「ファンタスマゴリア」です。旅行者となって不思議な惑星ファンタスマゴリアを体験できる、インタラクティブな作品。わりと有名な作品かもしれません。愛があれば大丈夫で購入できます。

ファンサイトの充実ぶりはもうびっくりです。愛にあふれてます。

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2005年02月22日

結婚の条件

4022643862結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)
小倉 千加子
朝日新聞社出版局 2007-01

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現代の結婚について知るにはこの本が最適。著者の大阪人らしい芸達者な語り口は、この本の文章にも生きている。だからとても読みやすいのだが、その内容は現在日本で展開されている、仕事と結婚を巡るすさまじい状況を描いている。ワイドショー的に梅宮アンナや倉田真由美を観察し、それが意味するものを分析するかと思えば、教えている大学の学生の意識から今後の日本社会を示唆するなどその内容は縦横無尽、実に刺激的だ。

女子学生は、現在の自分の生活水準を保障してくれる男を探し、男子学生はユートピア的場所となる女を探す。しかし、そんな理想の相手はどこにもいない。

この身も蓋もないところが著者の真骨頂であり、今の日本の実情でもある。

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2005年02月19日

戦争請負会社

4140810106戦争請負会社
Peter Warren Singer 山崎 淳
日本放送出版協会 2004-12

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堀江社長は「金で買えないものはない」と言ったが、それは言い方を少し変えると「この世でビジネスにならないものはない」ということになるのかもしれない。そのビジネスの本家、すべての道がビジネスに通じる国アメリカでは、戦争の民営化という事態が進行しているという。その実態を詳細に追ったのがこの本だ。

イラク戦争時に流された映像に、戦況の経過を伝える記者会見があったが、変にソフィスケートされていて違和感があった。会社のプレゼンやってんじゃないかと思えるほどの手慣れた様子だった。

ラムズフェルドが理想とする戦争のかたちは、きわめてクリーンなものだ。アメリカ兵はゲーム感覚で作戦を遂行するだけでいい。人を殺した痛みを味わう必要もない。今はまだ人間を投入しなければならないが、できるだけ早く兵士をすべて機械に変えてしまいたい。本気で彼はそう考えているだろうし、事実、その方向に着々とアメリカは進んでいる。

僕は、本質的にアメリカと日本はよく似ていると考えている。アメリカで起こることは、数年のブランクを置いて、必ず日本でも起こる。唯一、アメリカと日本を分けているのは日本国憲法の存在だが、これも近い将来、二つの国を分けるものではなくなる。二大政党がともに改正を目指し、世論の支持もあるとなれば、その帰結は自明の理だ。その暁には、日本は普通の国という名のアメリカの相似国としてのかたちがほぼ完成するだろう。

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2005年02月13日

覇 -LORD

4091875114覇-LORD 1 (1) (ビッグコミックス)
池上 遼一
小学館 2005-01-28

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三国志漫画といえば、正統派で淡々とした描き方の横山光輝『三国志』と漢たちの咆吼がきこえる『蒼天航路』が二大巨頭だが、それらに次ぐ作品になると期待されるのが武論尊と池上遼一がタッグを組んだ『覇 -LORD-』だ。

『覇 -LORD-』は、"超"三国志と銘打たれている。何が"超"なのか? まず、劉備である。この第一巻では、劉備の死と誕生が描かれる。そして驚くことに、劉備は張飛を超える戦闘力をもっている。このままいくと、呂布と互角以上の戦いをしてしまいそうな勢いである。

この劉備を受けいれられるかどうかが、従来からの三国志ファンにとってはポイントになりそうだ。横山『三国志』は演義をベースに、『蒼天航路』は正史をベースにした作品だが、『覇 -LORD-』はどうだろうか。どちらかといえば正史寄りに思えるが、史実のポイントを押さえた上でかなり自由なアレンジがなされそうだ。気が早いが、諸葛亮の登場が待たれる。

この第一巻で面白かったのは、他の作品ではその強さばかりが強調されがちな張飛が、その性格的弱さもふくめて掘り下げられていること。強いくせにやたら殴られるのも張飛らしい。

また、曹操と関羽、劉備と趙雲、という後に伏線となりそうな関係も描かれる。ただ、白馬将軍のファンはその姿にがっかりされることと思う。

結論を言えば、『覇 -LORD-』は三国志の新しい展開として十分に期待できる内容だ。劉備の秘密が今後、物語にどうかかわってくるのかも注目だ。

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2005年02月03日

パソコンは買ったまま使うな!

4007000883パソコンは買ったまま使うな!―フリーソフトで作る快適環境― (岩波アクティブ新書 (88))
鐸木 能光
岩波書店 2003-10-08

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この本では、便利なオンラインソフトを多数紹介している。オンラインソフトとはインターネット上で入手できるソフトのこと。市販のソフトに比べて多機能ではないが、基本的な機能は備わっている。むしろ市販ソフトのような多機能すぎて使いこなせないということがないので、使い勝手はオンラインソフトの方が上であることも多い。

さらにオンラインソフトは一般の有志によってつくられているので、フリーすなわち無料であることも少なくない。機能が絞られている点を考えれば、オンラインソフトはむしろパソコン初心者が使うのにうってつけのソフトウェアであるともいえる。

そうしたオンラインソフトを使って、パソコン環境を改善しようというのがこの本の趣旨だ。著者は言う。Wordや一太郎より、メモ帳に代わるテキストエディタを。セキュリティに問題のあるOutlook Expressより、フリーのメールソフトを。

僕は自分自身をパソコンに関しては中級者程度と思っているが、そんな僕にとって実際に役立ったのは、ソフトの起動をになうランチャーソフトとクリップボードを充実させるソフトについての箇所だった。初心者に限らず、中級者上級者であっても何かしらの発見がある本ではないかと思う。

著者はこうも言っている。

下手なパソコンスクールに通うよりも、優秀なオンラインソフトに触れ、使えるようになることのほうが、本当の力になる。

この本は、単にオンラインソフトを紹介しているだけではない。最近のオープンソースの流れにもつながる、能動的にパソコンを使おうという呼びかけが込められているのである。

岩波アクティブ新書は終刊したので、入手するならお早めに。同著者による『デジカメ写真は撮ったまま使うな!―ガバッと撮ってサクッと直す』もおすすめ。

著者 鐸木能光氏のサイト (音楽が鳴るのはいただけない)

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2005年01月26日

30歳からの成長戦略

456966779130歳からの成長戦略―「ほんとうの仕事術」を学ぼう (PHP文庫 や 36-1)
山本 真司
PHP研究所 2007-02

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こういった本には普段あまり関心がないのだが、これは評判がいいようだ。負け組になるという恐怖感から、強迫観念的にいつまで価値があるのかわからないような資格にふりまわされてしまう。そういった若手に向けて、戦略的に自分を成長させる方法を提案する本だ。

こういった本は実務的で具体的であることがもっとも重要だが、その条件は満たしているようだ。自分の中にも、負け組になるかもという恐怖感はたしかにある(ていうか、もうなってる?)し、戦略不在がもたらす損失がいかに大きなものかは最近ようやくわかってきた(遅っ)ので、是非読んでみたい。

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ファスト風土

4896918479ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)
三浦 展
洋泉社 2004-09

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やたらと危機感を煽った本というのは信用しないのだが、この本はどうだろうか。地方が郊外化し、均一化していく中で、これまでとはまったく異なる性格の凶悪な犯罪が生まれている。著者はそこに因果関係を見ているようだ。

こういった新しい視点からの問題意識によって書かれた本には、客観的な分析と論旨が明確な説得力のある記述、問題を克服するための独自の提案が求められる。この本がそうした条件を満たしているかどうかは読んでみないとわからない。

この本で興味をひかれたのは、その書名にある「ファスト風土」というネーミングだ。人工的で無個性な感じはよくでている。

僕自身地方に住んでいるが、東京や名古屋に行った後に自分の住んでいる地方都市に帰ってくると、最早同じ日本ではないのかもしれないという気持ちにさせられる。経済の専門家は「都市部や大企業の景気は回復している。残るは地方と中小企業だ」と言い、都市部の成長に連動するかたちでいずれ地方も立ち上がるように考えているようだが、僕は疑っている。都市部と地方はすでに切り離され、今、二つの日本が出現しつつあるのではないか。例えば、アメリカのように。例えば、中国のように。

地方の問題というのは、日本がかかえる問題の中でもその本質にかかわる問題だと思うが、メディアではあまり取り上げられていないように感じる。この本はそれについて考えるのに、いくらか参考になるかもしれない。

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2005年01月14日

万博

489691886Xつくば科学万博クロニクル (洋泉社MOOK)
洋泉社 2005-01

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こんな本を見つけた。僕にとって万博といえば、つくば万博なのである。大阪万博のころには生まれていなかったし、今年開催される愛知万博は万博というより幕張メッセなんかでよく開かれるビジネスフェアの拡大版という感じがする。

幼き頃、まだ科学ってすごいなあと素朴に思えていたころに出会った万博であり、自分の中では万博はつくば万博で終わっている。それ以降、地方博のぎふ中部未来博と世界デザイン博に行ったが、どんな内容だったかほとんど覚えていない。特に、ぎふ中部未来博は地元岐阜県の学校に強制動員がかけられていたので、僕は否応なく行くはめになった。もうそのころは子どもながらアトラクションのレベルを見極めるぐらいの力はあったので、ちゃちな内容にうんざりした印象だけが残っている。

様々な地方博が開催された時期、人々の頭には博覧会=公共事業というイメージが刷り込まれた。愛知万博がなぜ盛り上がらないか、といえば近年の公共事業に対するイメージの悪化が影響しているからだ。

愛知万博はおそらくそこそこの成績を収め、成功したものとして幕を閉じるだろう。天下のトヨタが、無惨な失敗という状況をつくりだすとは思えない。まっとうなビジネスマンなら、今の時期は万博を利用して儲けることに専心しなければいけない。

だが、空港事業とあわせた財政負担で愛知県の財政は大変な困難を抱えることになる。閉幕後は、”元気な名古屋圏”のめっきも剥がれるかもしれない。ましてや、愛知万博が文化的な何かを残すことなど思いもよらない。

今から思えば、つくば万博のころすでに世の人々は、科学が人を必ずしも幸せにしないということを知っていた。だが、僕はまだ気づいていなかった。翌年にチェルノブイリ原発事故が起きるまでは。

コスモ星丸

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2005年01月03日

仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか

479810440X仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか
中嶋 愛 金井 壽宏
翔泳社 2003-11-22

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ここ数年、新しい働き方を考えようとする本が数多く出版されている。目についたものを挙げていくと、『働くということ』『魂の労働―ネオリベラリズムの権力論』『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』、玄田有史氏の著作群など。まだまだあるだろう。

これだけ仕事にかんする本が出版されているのは、仕事に悩んでいる人、迷っている人がそれだけ多いということを示している。ここで紹介する本の副題にあるように「なぜ、私たちは働くのか」という問題について考えざるをえない状況が、日本のあちこちで生まれているということだ。

『仕事の裏切り』は新しい働き方を読者に提案する実践的な本というより、仕事というものを歴史的、哲学的、社会的に考察する学術的な本である。先に挙げた本では、『魂の労働』に近いスタンスである。

構成はわかりやすい。第1部では奴隷労働や産業革命時代の労働を考察し、仕事が呪いだった時代について述べる。第2部では企業が従業員の労働を促進するために、福利厚生に力を入れるようになった歴史が述べられる。企業と従業員の蜜月の時代であり、企業が従業員の人生までも支配していく歴史でもあった。日本でいえば、企業が従業員の終身雇用を保障していたバブル崩壊以前が相当するだろう。そして第3部はリストラの時代。もう企業は従業員の雇用を保証してくれない、真面目に働いていてもリストラされる現代の世界について述べている。

人々は戸惑っている。つい最近まで、”普通に”働いていれば定年まで勤めあげることができる社会だったのに、90年代以降、たえず自分の存在価値を示し続けなければ会社に残ることができなくなった。日本はようやく景気回復し始めたが、企業はダウンサイジングやリストラをやめようとはしない。雇用なき景気回復。仕事の現場における変化は驚異的といえる。だが働く人の"こころ"が、社会の変化についていけていない。いつクビになるかわからない社会で、どういうスタンスで仕事と向き合えばよいのか、それがわからない。

リストラされる恐怖から長時間労働を引き受ける正社員。派遣、パート、フリーターといった増え続ける不安定雇用。すべては、「仕事」を人生の中でどう位置づけるかということにかかわってくる。

厄介なのは、万人に通用する働き方というものが最早存在しないことだ。これが、新卒で入社して定年まで同じ会社で働くというモデルに大半の人がしたがっていた時代との大きなちがいだ。「仕事」を人生の中でどう位置づけるという課題は、結局のところ、一人一人が試行錯誤しながら考え抜く以外に解決できない。この本はそのことをはっきりと教えてくれる。

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